「赤い花が4本あります。青い花が7本あります。花は全部で何本ありますか。」
「庭にハトが5羽います。そこから2羽飛んでいきました。ハトは庭に何羽いますか。」
これらは、漢字は別にすれば、1年生レベルの算数文章題です。これをできない2年生はいません。ほぼ全員が理解できます。
ところがこちらだとどうでしょう。
「3人を乗せたバスが出ました。1つ目のバス停で2人おり4人乗りました。2つ目のバス停では5人乗ってきました。3つ目のバス停は通りすぎ、4つ目のバス停で1人乗り3人おりました。バスには何人乗っていますか。」
2年生のみならず、3年生でもつまづく人がいるでしょう。
ひとつひとつの要素は最初に挙げた問題と変わりません。足し算と引き算しか出て来ず、考え方が難しいところはないからです。にもかかわらずつまづいてしまう。
この原因は、順を追って考えれば簡単なのに、一気にまとめて考えてしまうことにあります。そもそも式が複数必要な問題が苦手というか、どうすれば良いか対処法を知らないのです。今回はその対処法を見ていただきます。
例題1
6人が公園で遊んでいます。新しく3人遊びにきました。その後5人が帰りました。公園で何人遊んでいますか。
これくらいだと全体をイメージして
○○○○○○←○○○
↓
○○○○○
となり、式1本で済ませられます。
6+3-5=4
ただし、立てた式が偶然合っていたということも珍しくないでしょう。数字が3つしかなく、最初6で、3人来たとあるから+、5人帰ったとあるから-かな、とすればできてしまうからです。
偶然かどうかは、もう少し手数が必要な問題になればすぐに判ります。例えば、「5人が帰りました。」を「来た数の2倍の数が帰りました。」と変えれば、おそらく難しいでしょう。
それは実は、全体を一気にイメージできた人にも言えることです。本当に力があれば、かなりの難問でも全体像をざっくりイメージしてから細かいところに手をつけていくことができます。しかしそこまでの実力でなければ、手数が増えるとやはりイメージできずに解けなくなってしまいます。
これに対応するには、イメージをもう少し分割して、ひとつひとつの処理を丁寧に行っていく必要があります。この例題なら、3人が来たところと5人が帰ったところを分けて考えてみることです。
一歩一歩、式を一本ずつこなして積み上げていくようにすれば、着実に正解に近づいていきます。
その上で慣れてくればまとめてイメージし、式もまとめて処理できるようになります。難しければ分割。余裕があればまとめる。これを実践していけば、だんだんと実力はついていきます。
例題2
「3人を乗せたバスが出ました。1つ目のバス停で2人おり4人乗りました。2つ目のバス停では5人乗ってきました。3つ目のバス停は通りすぎ、4つ目のバス停で1人乗り3人おりました。バスには何人乗っていますか。」
冒頭の問題です。まとめてイメージし、ひとつの式で仕上げることもできますが、ここでは細かく分割して処理していきましょう。
・1つ目のバス停
バスには3人乗っています。2人おりました。ここまでをイメージして式を立て、人数を出してください。
〇〇〇→〇〇
3-2=1(人)
続いて4人乗りました。同じようにそこまでの人数を出してください。
〇+〇〇〇〇
1+4=5(人)
1つ目のバス停の乗り降りがおわり、6人が乗っています。この処理を考慮すると、問題の一部が短くできます。
↓
「5人を乗せたバスが1つ目のバス停を出発しました。2つ目のバス停では5人乗ってきました。3つ目のバス停は通りすぎ、4つ目のバス停で1人乗り3人おりました。バスには何人乗っていますか。」
このように、処理が終わった部分を読み換えながら問題文を再び読みます。繰り返し読むことで、ミスも減るし全体像もよりクッキリと浮かびやすくなります。この作業により、最初は全体像をイメージできなかった場合も次第にイメージしやすくなってきます。
・2つ目のバス停
5人乗ったバスが次のバス停に着くと、5人が乗って来ました。
〇〇〇〇〇←〇〇〇〇〇
5+5=10(人)
2つ目のバス停を過ぎて10人が乗っています。問題もこうなります。
「10人を乗せたバスが3つ目のバス停を通り過ぎました。4つ目のバス停で1人乗り3人おりました。バスには何人乗っていますか。」
もう全体像が見えない人はほとんどいなくなります。でもここまで来たら、最後まで細かい分割処理をしておきましょう。
・4つ目のバス停
1人乗りました
〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇←○
10+1=11(人)
続けて3人おりました。
〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇○→〇〇〇
11−3=8(人)
最終的な答えは8人でした。長い問題でも細切れにして処理していけば最後は簡単な問題になることがわかりました。今回は全て細かく分割しましたが、まとめてやれるのならば能力に応じてやれば良いのです。ただ私は、全部が全部まとめてやるのはオススメしません。私はバス停ごとに処理します。1バス停につき1つの図・式ということですね。
このやり方のポイントはマメに問題を読み返すことです。算数的に難しい処理は要求されていない文章題でも、苦手という子供はほとんど問題文が理解できていないのですから、理解できるまで問題文を読むのが当たり前です。意味がわからない問題はギャンブルです。わからないまま合ってしまうこともありますが、確率的には良くない。何より、解いた爽快感がありません。算数の醍醐味は問題を制圧しての完全試合です。そのためには問題の完全理解が不可欠です。
まとめ
- 問題文をよく読んで全体像をつかむ。
- 全体像がつかめないときは分割し、わかるところを処理する。
- 処理した部分を読み換えながら問題文を繰り返し読む。それを全体像をつかめるまで続ける。
算数文章題を解くためには、算数的センスは別として、全体像を見る俯瞰力、イメージする想像力が必要となることがわかっていただけたと思います。それらの能力は記憶力を伸ばすことでもかなり補えます。考える力をつけるには記憶力も大事なのです。算数と記憶もの、バランス良く練習してください。
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